ここから先は専門的なページです。診断書も計算書も実測データも加工せずそのまま公開します。他社と比較検討中の方こそ、じっくりご覧ください。
既存のUA値は3.03。現行基準の最低等級「等級1」でした。
天井断熱・床下断熱だった構成を、屋根断熱・基礎断熱に組み替え、付加断熱を施工。改修後のUA値は0.25——6地域の等級7基準(0.26以下)をクリアする、断熱等性能等級7(最高等級)です。熱の逃げやすさは、およそ12分の1になりました。
下の判定表は、省エネ診断ソフト(ホームズ君)による計算書の実物です。


数字だけではピンと来ないかもしれません。断熱がどれだけ効くかは、「暖房を止めたら、この家はどうなるか」で考えると分かりやすくなります。下は年間の室温シミュレーションです。2月18日の20時、外気温4.4℃。暖冷房を一切使わない条件で計算しても、LDは19.8℃、寝室18.9℃、いちばん低い浴室でも18.3℃を保っています。

ただしこれは計算結果であって、「暖房が要らない家」という意味ではありません。18℃台は寒くはないけれど、暖かいと感じる温度でもない。お伝えしたいのは、それだけ少ない暖房エネルギーで家全体が暖まるということです。
計算だけで終わらせず、実際に測って比べました。夜から朝までの10時間で、室温がどれだけ下がるかです。
| 夜 | 朝 | 下がった温度 | |
|---|---|---|---|
| リビング 計算 | 19.8℃ | 17.0℃ | 2.8℃ |
| リビング 実測 | 18.8℃ | 15.4℃ | 3.4℃ |
| 脱衣室 計算 | 19.8℃ | 17.0℃ | 2.8℃ |
| 脱衣室 実測 | 18.5℃ | 15.5℃ | 3.0℃ |
| 外気温 計算 | 4.4℃ | −0.9℃ | |
| 外気温 実測 | 5.7℃ | 0.9℃ |
計算では2.8℃、実測ではリビング3.4℃・脱衣室3.0℃。実測のほうが0.2〜0.6℃多く下がりましたが、下がり方はほぼ同じでした。
※ 計算は、暖冷房を使わない条件の2月18日20時から19日6時まで(ホームズ君)。実測は2026年2月23日20時33分から24日6時33分までで、エアコンは同日9時33分から17時33分まで運転しました。計算と実測では日付も運転条件も同じではありません。脱衣室は、計算の図面では「洗面」です。
精密診断の結果、既存の上部構造評点は0.29。「倒壊する可能性が高い」という判定でした。
これが築53年の空き家の現実です。私たちは精密診断法1で現状を数値化し、補強計画を設計。壁の保有耐力をX方向6.54kN→49.85kN、Y方向11.10kN→46.30kNまで高め、改修後の評点は1.55「倒壊しない」(最高判定)になりました。



計算で補強を設計して終わりにせず、完成した建物がどう揺れるかを「微動探査」で実測しました。建物や地盤が常にわずかに揺れている様子をセンサーで測り、揺れの周期と、建物の強さのバランスを調べる方法です。
築53年の家の固有周期は0.09秒。新築の木造住宅の平均的な範囲とされる「0.3秒未満」に入りました。
固有周期は、建物が1回揺れて戻るまでの時間です。短いほど揺れにくく、耐震性が高い目安になります。一方、この土地の地盤は、やわらかく揺れやすい第三種地盤でした。それでも建物(0.09秒)と地盤(1.06秒)の揺れの周期が大きく離れているため、地震のときに共振する可能性は低いと評価されています。
剛心は、建物の強さの中心です。重心(重さの中心)から離れるほど、地震のときに建物がねじれやすくなります。この家は重心と剛心がほぼ同じ位置にあり、補強した壁が偏りなく効いていることが確かめられました。
調査:2026年5月23日 株式会社Be-Do / 解析:国立研究開発法人 防災科学技術研究所(微動クラウド解析システム) / 報告書:株式会社KULOCO
※ 微動探査は耐震性の目安を示すもので、地震で被害を受けないことを保証するものではありません。2000年5月以前に建てられた住宅として、建物の固有周期は安全率を見込んで評価されています。グラフは報告書の数値をもとに当社で作成しました。
完成時の気密測定で、C値0.2㎠/㎡(実測)。
家全体の隙間を集めても、名刺半分ほどの面積しかないという意味です。新築でもC値1.0を切れば高気密と呼ばれるなか、築53年の改修でこの数値を実測で出しました。気密は断熱の効果を保証し、換気を設計どおりに機能させる土台です。当社は新築では全棟で、リノベーションでは野郷の家以降の全棟で、気密測定を行っています。C値0.3以下の保証は新築のみで、リノベーションは建物ごとの条件差が大きいため保証値を設けていません。
断熱を強化した壁は、計算を誤ると内部で結露し、静かに腐っていきます。
だから私たちは施工前に、冬型結露(室内の湿気が壁内で冷やされる)と夏型結露(外の湿気が冷房で冷やされた壁内で結露する)の両方を計算で検証しています。見えなくなる場所こそ、計算で守る——これが「永く住める家」の裏側です。


改修前の現況調査で、真夏の屋根表面をサーモグラフィで実測した数値です。この熱が、断熱のない天井を素通りして室内に降りてくる——昔の家が夏に暑い理由は、感覚ではなく数字で説明できます。
だからこの家は「屋根断熱」に組み替えました。設計は、いつも実測から始まります。


断熱のない家は、屋根裏が41℃、室内の建具まで37℃を超えていました。「昔の家の夏は暑い」——その理由が、この画像に全部写っています。
冬の換気に、ファンは使っていません。温度差だけで空気が動く「パッシブ換気」です。
パッシブ換気は、暖かい空気が上へ昇る力だけで家全体の空気を入れ替える方式です。給気口から入った外気は、まず床下を通ります。床下エアコンの熱で暖められた空気は、床のガラリから静かに立ち上がり、室内を満たしながら天井へ昇り、最後にロフトの排気口から出ていく。ファンがないので、電気を使わず、音もせず、壊れるものもありません。
ただしこの方式には、給気口と排気口の高低差が要ります。差が大きいほど空気を押し上げる力が強くなるからです。そのため一般には吹き抜けのある家や2階建てで採用され、平屋では難しいと言われています。
このモデルハウスは、平屋です。確保できた高低差は3.1m。設計段階では計算上の話でしかなく、本当に空気が動くかどうかは、建てて測るまで分かりません。だから測りました。



※ 内外温度差10℃の条件で実測


計画換気量と比べると少なく見えるかもしれません。ただしこれは、現場に立ち会えた時間帯(朝と夕方)の内外温度差10℃という条件での数値です。パッシブ換気は温度差が大きいほど強く働きますから、冷え込む冬の夜間は、これより多くの空気が動いているはずです。設計時のシミュレーションは換気量50㎥/hで計算していたため、結果に大きな差は出ないと考えています。
なお、この実測は暖房を運転した状態で行っています。
パッシブ換気の原動力は、室内と屋外の温度差そのものです。暖房で室内が暖まっていなければ、空気は動きません。暖房と換気は、切り離して考えられない一組の設計——だから当社は、断熱・気密・暖房・換気を必ずセットで計画します。
そしてもうひとつ、確かめたかったことがあります。パッシブ換気でいちばん怖いのは、入ってきた冷たい空気が、家を暖めないまま素通りしてしまうことです。ファンで押し込まないぶん、空気の通り道の設計を誤ると、狙った経路で流れてくれません。
ロフトの排気口に入れた温度計は、外気温が低い時間帯でも20.1℃を示していました。
外気は床下で暖められ、室内を通り、天井へ昇って、最後に20.1℃まで暖まった状態で出ていく。冷たい空気が素通りしているのではなく、家全体をひと巡りしてから排気されている——空気が設計した経路をたどっていることを、温度で確認できた瞬間でした。

夏は切り替えます。ロフトエアコン1台で上から冷気を降ろし、3種換気で排気。エアコンの風が直接体に当たらないので、「冷房が苦手」な方にこそ体感してほしい空調です。新築では全棟、リノベーションでは野郷の家以降の全棟で、完成後に換気の風量測定を行い、設計どおりに空気が流れているかを毎回答え合わせしています。