建て替えるしかないと言われた家でも選択肢は一つではありません。築53年の平屋、延床70.77㎡。断熱等級1、上部構造評点0.29。「倒壊する可能性が高い」と診断された家を断熱等級7、上部構造評点1.55まで引き上げました。その家は今、出雲市斐川町でモデルハウスとして公開しています。
📍 施工エリア:出雲市を中心に、松江市など近隣も
いずれもこのモデルハウス1軒の数値です。既存住宅の状態は一軒ごとに違うため、同じ数値をお約束するものではありません。
結論を先に申し上げます
建て替えのほうが合理的な場合もあります
リノベーションを扱う会社が「リノベがお得です」と言うのは簡単です。けれど既存住宅は、一軒ごとに状態が違います。基礎の傷み方、シロアリの被害、柱や梁の断面、必要な間取り変更の大きさ、そして予算。これらを見ないまま方針を決めることはできません。
このモデルハウスも、屋根のセメント瓦は劣化し、壁のトタンは錆び、部分的にはシロアリにもやられていました。それでも再生できると判断したのは、診断して数値を確かめたからです。
診断してから判断します。診断せずに勧めることはしません。
ときには「この建物は、建て替えたほうがいいと思います」とお伝えすることもあります。リノベーションを請けたい気持ちより、その家に住む方の35年後を優先したいからです。
リノベーションで性能を上げるとき、私たちが順番に確かめていくことです。どれか一つでも欠けると、他が台無しになります。
既存住宅の耐震は、まず精密診断で現状を数値にします。このモデルハウスは上部構造評点0.29、「倒壊する可能性が高い」という判定でした。そこから補強計画を設計し、1.55(倒壊しない)まで引き上げています。工事後には微動探査を行い、計画どおりの強度が出ているかを確認しました。
古い家の多くは、天井断熱・床下断熱という構成です。これを屋根断熱・基礎断熱へ組み替えることで、家全体をひとつの器として扱えるようになります。断熱材の種類と厚さは、既存の構造で入れられる範囲と予算から決めます。新築では長くセルロースファイバーを使い、2023年度からグラスウール付加断熱へ切り替えました。リノベーションではウレタンフォームの吹き付けを使ったこともあります。どれか一つの材料に固定してはいません。
気密は、断熱の効果を保証し、換気を設計どおりに機能させる土台です。古い家だから無理、ということはありません。ただしリノベーションでは建物の条件差が大きいため、保証値は設けていません。
断熱を強化した壁は、計算を誤ると内部で結露し、静かに腐っていきます。だから施工前に、冬型結露(室内の湿気が壁内で冷やされる)と夏型結露(外の湿気が冷房で冷やされた壁内で結露する)の両方を検証します。見えなくなる場所こそ、計算で守る。
エアコンを何台、どこに置くか。これは感覚ではなく、その家の熱負荷を計算して決めます。換気も同じで、方式を先に決めるのではなく、建物の条件に合うものを選びます。完成後は風量を測定し、設計どおりに空気が流れているかを確認します。
計画で終わりにせず、最後に測って答え合わせをします。設計どおりの家が建ったかどうかは、数値でしか確かめられないからです。
このモデルハウスは、既築住宅のZEH改修実証支援事業に採択されました。
制度は年度ごとに変わるため、その時点で使える制度をお調べしてご提案します。金額をお約束することはできません。
数値を2軒分、そのまま並べます。
| リノベーション モデルハウス | 野郷の家 | |
|---|---|---|
| UA値 | 0.25(等級7) | 0.42 |
| C値(実測) | 0.2 ㎠/㎡ | 0.9 ㎠/㎡ |
既存の構造、断熱を入れられる範囲、予算——条件が一軒ずつ異なるからです。だから私たちは、目標の数値を先に決めるのではなく、診断してから、その家で実現できる性能を組み立てます。